トリプトファン事件の教訓とサプリメント摂取で注意すべきこと


「サプリには頼らない方がよい」というような言葉はよく聞きます。

感覚的にわからなくもないですが、何を根拠にそう言っているのか今ひとつはっきりしない感じがします。

一方、サプリメントについてはこのブログでもよく取り上げています。

そこで、サプリの安全性についてもう一度考え直してみることにしました。

トリプトファン事件

サプリメントの安全性を考えるときに、トリプトファン事件は避けては通れない出来事です。

トリプトファン事件は、いろいろなことを私たちに教えてくれている気がします。

トリプトファンとは何か

トリプトファンは必須アミノ酸の一種です。

トリプトファンは体内で合成できないので、私たちはトリプトファンを食物から摂取しなければなりません。

摂取されたトリプトファンは他の必須アミノ酸と反応して体の材料となったり、脳に運ばれてセロトニンの材料になったりします。

セロトニンは精神安定や鎮静、催眠効果をもっています。

また、セロトニンは松下垂体に運ばれメラトニンに変換されます。

メラトニンは睡眠サイクルと大きく関係するホルモンです。

つまり、トリプトファンはセロトニンやメラトニンの材料なのです。

このようなことから、アメリカではサプリメントとしてトリプトファンの販売がはじまり、人々の間に浸透していきました。

ところが、1980年代の後半にトリプトファンの摂取により死亡者が出るという事件がありました。

この事件は、ことの真相は別にして、遺伝子組替えによりトリプトファンの製造過程で不純物ができ、その不純物が混入したためだといわれています。

以上がトリプトファン事件の概要です。

トリプトファン事件の概要

トリプトファン事件は1988年末から1989年6月にかけて、トリプトファンを含むサプリメント(昭和電工製造)を摂取した人の好酸球が異常に増加し筋肉痛や発疹を伴う症例や、好酸球増加筋肉痛症候群が大規模に発生した事件です。

そしてその事件での被害者数は、死者38名を含む数千人にものぼるものでした。

訴訟件数は全体で2000件を超え、賠償請求額は2000億円に達したものとみられています。

参考:Wikipedia トリプトファン事件

好酸球(こうさんきゅう、Eosinophil granulocyte)は、白血球の一種類であり血球細胞の1つで顆粒を生成する事が出来る事から顆粒球とも呼ばれます。

好酸球は、ある種の寄生虫に対して体を守る免疫機能を担っていますが、一方で、アレルギーによる炎症の一因にもなります。

http://blood.e840.net/b101220.html

何が人の命を奪ったか(トリプトファン事件の謎)

事件の原因究明については事件が発生したアメリカと会社のある日本でなされました。

しかし、昭和電工による設備や菌等の破棄により、決定的なことはわからないままのようです。

ただ、調査の中ではっきりしたことは、昭和電工のトリプトファンには60種類の不純物を含んでいたこと、そしてその中のエチレンビストリプトファン(EBT)とフェニルアミノアラニン(PAA)の毒性が原因になったのではないかということ、そして原因物質が遺伝子組み換えの過程で生成された可能性があるということのようです。

ただし、裁判においては原因は「不純物」ではなく、大量摂取によるものとされたようです。

この事件は、1989年後半、米国において、L-トリプトファンを主成分とする食品を摂取した者の中から、全身性の激しい筋肉痛と好酸球増多を主な症状とする健康被害(好酸球増多・筋肉痛症候群:EMS)が多発したもので、報告患者数は米国だけで1500人以上と言われています。

この事件は、L-トリプトファン含有食品の製造工程で生成された不純物が健康被害の一因であったと言われており、厚生省の「必須アミノ酸等製品による健康被害に関する研究班」においては、これらの不純物が組換えDNA技術と直接関連性があるとは言えないとしています。

(→研究班の報告書 文献番号19970397 「必須アミノ酸等による健康影響に関する研究」)

厚生省としては、当該食品に含まれていた不純物の特定等による健康被害の発生機序の解明等を行ってきたところであり、現在、2種類の不純物の特定までの研究成果がありますが、これらの不純物と健康被害との関連性については、さらに調査研究を行うことが必要とされています。

厚生労働省|遺伝子組み換え食品Q&Aより

多くの人が命を失い健康被害を被った、その原因については未だに解明されてはいないようですが、トリプトファン事件は多くの教訓を残しました。

過剰摂取の危険性

薬は量を間違えると毒になります。このことがアミノ酸にも当てはまるということです。

当時アメリカの1日に1000mg以上摂取することになるトリプトファンサプリを回収したそうです。

今日においても摂取基準量や上限をよく確かめて用いた方が良さそうです。

「特定のアミノ酸を高濃度に含有させた健康食品を計測的に摂取するとアミノ酸バランスを損なうおそれがあるので、このような健康食品を継続的に摂取することのないよう注意すること」

「アミノ酸を含有する健康食品の取扱について」厚生省より 1990年3月31日 

それでもサプリメントが必要な理由

サプリメントの意義は、食事から摂取することが困難でなおかつ必要な栄養素を摂ることを可能にするという点にだと思います。

これは例ですが、厚生省は平成12年に「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な女性等に関する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」という資料の中で、次のように呼びかけました。

食品からの葉酸摂取に加えて、いわゆる栄養補助食品から1日0.4mgの葉酸を摂取すれば、神経管閉鎖障害の発症リスクが集団としてみた場合に低減することが期待できる旨情報提供を行うこと。

加えて、この資料には細かな摂取上の注意事項がかかれてありました。

関心のある方は、上のリンクから該当ベージへジャンプしてご覧ください。

このように、サプリは使い方によっては大変すばらしいものです。

トリプトファンも多くのサプリは、睡眠効果など大変魅力的でかつ安全なものです。

しかし、同時にサプリメントは医薬品同様、諸刃の刃であることを忘れてはいけません。

オススメ記事
スポンサーリンク

シェアする